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あいさつ

 

本報告書は、モーターボート競走公益資金による日本財団の補助事業として平成6年度から8年度にかけて実施した「乗り心地のよい低動揺型船体形状の調査研究」の成果をとりまとめたものである。
近代において交通機関は著しい進歩を遂げ、車両の改良、道路の整備等により、鉄道や自動車などの陸上交通機関の乗り心地は飛躍的に改善されてきた。一方、船舶についてはアンチローリングタンクやフィンスタビライザーなどの減揺装置の開発、及び半淡水双胴船、全没翼型水中翼船、ステイブル・キャビン船などの開発、また、騒音低減や内外装の美質向上等によって乗り心地の改善が進んできた。しかしながら、動揺周波数が低く、動揺振幅の大きい船舶は他の交通機関に比べて乗り物酔い(船酔い)の発症率が極めて高く、船酔いに関する問題が依然未解決のままであることが、船舶の乗り心地に対する評価を他の交通機関ほど大きく高めることができない理由の一つとして挙げられている。
本事業では、この船酔いのメカニズム解明を中心テーマとする乗り心地の調査研究に始まり、低動揺型船体形状の開発に関する調査研究に至る、工学の分野だけでない医学、生物学など多方面からの総合的な調査研究に基づく乗り心地問題の解決に初めて挑戦した。過去3年間に渡る調査研究によって、乗り心地に関する実験的調査における計測方法等を確立し、数多くの乗り物酔いに関する医学的データ、及び系統的な船体動揺理論計算結果を得、船舶の乗り心地改善に有用な多くの知見を得ることができた。本調査研究の成果が人間へのさらなる理解に役立ち、「人にやさしい船及び浮体海洋構造物」につながる造船技術の振興、並びに造船関係産業の発展に寄与することができれば幸いである。
本事業は、横浜国立大学寳田直之助氏元教授を委員長とする「乗り心地のよい低動揺型船体形状の調査研究委員会」各委員の方々のご指導、ご審議により進められ、実施にあたっては、運輸省、関係団体、大学、関係研究所、関係海運造船会社の各位、医学関係有志の方々から多くのご指導・ご協力を賜った。これらの方々に対して心から感謝の意を表する次第である。

 

平成9年3月
財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団
会長 今市憲作

 

 

 

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